この記事では、副業初心者向けに契約・納品・請求・入金までの一連のプロセスを、オンライン事務代行を例に解説していきます。
わたし自身、会社員をしながら、1年半ほどオンライン事務代行の副業をしていました。
オンライン事務代行は、事務経験さえあれば誰でも始められる副業として人気が高まっています。
副業に取り組み始めて最初の契約が見えてきたとき、嬉しさと同時に…
個人で仕事を受けるのは初めてだから、わからないことだらけ…
副業でも契約書って必要?
お金のやり取りはどうするの?
といった不安を感じている方もいるのではないでしょうか。
「お仕事の依頼が来たけれども、これから先にどんなふうに仕事を進めたらよいかわからない」
という人は、この記事を参考にしながら、オンライン事務代行の実務に取り組んでみてください。
仕事の依頼を受けたら最初にやること|業務範囲の特定と料金の提示

新規にお仕事の依頼を受けたら、まずは業務範囲を特定し、あなた自身がいくらで対応するのか料金の提示を行いましょう。
一般的には、契約を結ぶ前に発注者に対して「見積書」として、諸条件を書面に起こしてお渡しすることが多いです。
まずは、見積書の発行までのプロセスと、見積書発行の実務について解説します。
①業務の範囲や報酬、期限をすり合わせる
お仕事のご依頼を受けたら、その依頼内容の「どこまでが自分の責任の範囲なのか」「いくらで対応するのか」等を明確にし、発注者と合意しておくことはとても大切です。
業務内容・納期・金額
口頭やオンライン打ち合わせで決めたことばあれば、必ずチャットやメールなどで記録に残しておきましょう。
打ち合わせで決めたことを見積書に全てを記載する必要まではありませんが、仕事をするときの前提条件として、双方に合意した記録として残しておくことは非常に重要です。
資料作成の依頼(例)
- 修正対応は何回まで受け付ける?
- 納期はいつ?
- 納品形式は?(PDF・PowerPoint・Googleスライド等)
- 支払条件は?(総額なのか、頁いくらなのか、作業時間なのか等)
こうした細かい部分も、あらかじめ合意しておくと、後々のトラブルを防げます。
コミュニケーション
副業の場合、条件面で気を付けたいのは、コミュニケーションに関する部分です。
一般的な会社員の勤務時間(9:00~18:00)には返信が出来ない場合がほとんどだと思います。
副業であることを伝えながら、あなた自身がどういった条件下であれば、コミュニケーションが取れそうかを予め合意しておきましょう。
認識合わせが必要な事項
- 返信:タイムラグが発生することを了解頂けるか、いつまでに返信すれば良いか
- 曜日:土日祝日にご連絡をしても問題ないか
- 時間帯:早朝や夜間など、営業時間外(勤務時間外)にご連絡しても迷惑にならないか
- 利用ツール:Slack、メール、LINE等

副業はどうしてもクイックな対応が難しくなる分、予め期待値をコントロールしておきましょう。
アウトプットと同じくらい重要なことです。
②見積書を作成・提示する
オンライン事務代行のように、取引先ごとに個別対応が必要な業務委託の契約では、業務内容に応じた見積書を作成・提示し、合意を得てからスタートするのが望ましいです。
見積書の記載事項
見積書には以下のような項目を入れるとよいでしょう。
見積書に記載する項目
- 見積書の発行日
- 宛名
- 発行者
- サービス内容(業務の範囲)
- 金額(税込/税抜の明記)
- 納期 or 作業期間
- 支払方法(銀行振込がお勧め)
- 支払期限
見積書の作成方法
見積書のテンプレートはExcelでOKです。
ネットで調べてもらえれば、無料でダウンロードできる見積書のテンプレートが見つかると思います。
あるいは、会計ソフトの請求書発行機能や、無料のクラウドサービスを使うのもお勧めです。



口頭で合意したことを明文化しておくことは、トラブル防止だけでなく、お互いの安心にもつながります。
【コラム①】支払条件の決め方は?前払い or 後払い


報酬の支払条件も、見積書の作成段階で取り決めをしておきましょう。
お支払いのタイミングに「絶対のルール」はありません。
参考までに、前払いと後払いの代表的なケースをご紹介します。
前払いが望ましいケース
- 初対面で信頼関係がまだ築けていない場合
- 単発案件やテンプレート納品など、一度納品したら相手に使われてしまう業務
- 報酬が高額になる場合(例:5万円以上)
後払いでもOKなケース
- 信頼できる発注者の場合
- 作業時間や納品ページ数などの実績に応じて請求する契約の場合
- 法人からの案件受注で掛売が条件の場合
報酬の受け取りが遅れたり、未払いが発生すると、仕事に対するモチベーションが下がってしまいます。
また、場合によっては、取引先との信頼関係にも影響が出てしまうこともあるでしょう。
だからこそ、最初の段階でお支払いのタイミングもしっかりルールを決めて、双方合意しておくことが大切です。



業界の慣習を考慮しつつ、自分の希望で決めてOKです。
ただし、必ず取引先との合意を取りましょう。
【コラム②】支払方法に「クレジットカード払い」を求められたら?


副業の請求では、銀行振込での対応をおすすめします。
ただ、ごく稀に個人事業主の方へ対応などで、「クレジットカード払いはできますか?」と聞かれることもあります。
その場合は、以下のような対応ができます。
クレジットカード払いへの対応方法
- Stripe(ストライプ)やSquare(スクエア)などの決済サービスを利用する
- STORESやBASEなどのオンラインショップ機能を使って、商品(サービス)を登録し、カード払いに対応する
クレジットカード払いに対応するメリットは、カード会社が債務を負担してくれることです。
「お金が払われない」というリスクを回避することが出来ます。
ただし、こういった外部サービスを利用する場合は、決済手数料(3〜5%)がかかることが多いので注意しましょう。



クレジットカード希望の場合は、決済手数料を踏まえた金額設定をしておくのでも良いと思います!(実質的に発注者の方にご負担いただく)
信頼を得るための第一歩|契約を締結する
オンライン事務代行の場合は、原則「業務委託契約」に該当します。
副業では「契約書までは交わさない」というケースもありますが、簡易的な対応でも良いので、契約内容を明文化しておくことをお勧めします。
契約に必要な書類を準備する


一般的に、業務委託契約書や発注書は、発注者が用意するものです。
そのため、お仕事を請ける立場では、あなたが自分で書類を用意する頻度は少ないかもしれません。
ですが、どんなパターンがきても対応できるように、契約に使う書類の具体的なパターンを5つご紹介します。
よくある契約書のパターン5つ
- 秘密保持契約書、業務委託契約書を交わす
- 業務委託契約書だけを交わす
- 基本契約書を交わし、都度、発注書を発行してもらう
- 発注書だけを発行してもらう
- メールやLINE等で発注の意思表示をもらう
パターン①:秘密保持契約書、業務委託契約書を交わす
一番厳密にやるパターンです。
理想的な対応ではありますが、契約書の雛型を準備したり、その内容を吟味するのに時間と労力、専門的な知識が必要です。
予め用意しておいた業務委託契約書の雛型に見積書の内容を転記して、双方に押印するのが一般的な流れです。
パターン②:業務委託契約書だけを交わす
業務委託契約書の中に、秘密保持契約の条文を盛り込みんで対応することもできます。
契約書が1通で済み、バランスの取れた対応になると思います。
予め用意しておいた業務委託契約書の雛型に見積書の内容を転記して、双方に押印するのが一般的な流れです。
パターン③:基本契約書を交わし、都度、発注書を発行してもらう
基本契約書で契約の基本事項を合意しておき、依頼の都度、発注書を発行してもらいます。
繰り返しの発注が想定される場合は、この組み合わせが良いでしょう。
金額、納期、支払方法等、見積書で合意した内容をそのまま発注書に転記してもらえばOKです。
(見積書のタイトルを発注書に書き換えて、宛名と発行者を入れ替えるのでも良いです)
パターン④:発注書だけを発行してもらう
シンプルな方法で、専門知識も不要で、最低限の受発注の根拠を残すことはできます。
金額、納期、支払方法等、見積書で合意した内容をそのまま発注書に転記してもらえばOKです。
(見積書のタイトルを発注書に書き換えて、宛名と発行者を入れ替えるのでも良いです)



パターン③④の発注書で対応する場合は、
「〇日以内に返信がない場合は、受託されたものとみなす」
という文言を入れてもらえば、注文請書を省略することが出来ます!
パターン⑤:メールやLINE等で発注の意思表示をもらう
メールやLINE等での意思表示を受けて、お仕事をスタートさせるのは一番簡易的なやり方です。
この場合は、見積書も省略することが多いです。
あまりお勧めはしませんが、関係性や依頼内容によっては最適解になる場合もあります。
契約書や発注書を省略するケース
- 金額がかなり少額なので、受発注に事務工数をかけたくない場合(例:1万円未満)
- クイックな対応が求められている場合(当日納期、翌日納期等)
- 発注者と信頼関係が構築されていて、揉めごとになるリスクが限りなくゼロに近い場合



法律上は「口頭」でも契約が成立します。
とはいえ、最低限、メールやLINEでの履歴は残しておきましょう。
契約書を取り交わす


契約書の取り交わし方法は「紙」と「電子契約」の2パターンがあります。
以前は、紙の契約書が主流でしたが、ここ数年、電子契約サービスの利用が主流になっています。
どちらの方法も、押さえておきましょう。
パターン①:書面で取り交わす
ここでは、書面で業務委託契約書を取り交わす場合を例に、やり方を説明します。
契約内容に関して、双方合意したら、紙に印刷して同じもの2部を用意します。
2枚以上になる場合は、ホチキス止めした後に製本テープを使って製本し、割印をするのが一般的です。
発注者から押印された業務委託契約書が届いたら、自身も2部押印し、1部を返送します。
押印済みの業務委託契約書は、発注者と受注者、それぞれ1部ずつ保管しておきます。



契約金額によっては、収入印紙の貼付けが必要になります。
パターン②:電子契約を利用する
契約締結の依頼をメールで受信したら、書いてある手順に沿って対応すればOKです。
電子契約の操作は、紙の契約書に署名・押印する流れに合わせて作られているので、簡単に使えるものがほとんどです。
受注者は、基本的に無料で使えます。
代表的な電子契約サービス
- クラウドサイン
- Docu Sign
- GMOサイン
- freeeサイン



契約締結の場面で内容を精査すると手戻りが多くなります。
事前にドラフト確認させてもらえるように、発注者にお願いしてみましょう。
【コラム③】契約書を用意するのは誰の仕事?
一般的に、業務委託契約書や発注書を準備するのは、発注者が用意するのが商慣習と言われています。
受注するだけなら業務委託契約書や発注書を準備する必要はありませんが、わたしは自分でも雛型を用意しています。
受注者が書類を用意するケース
- 発注者が個人事業主の場合、契約書のテンプレートを持っていない場合
- ベンチャー企業やスタートアップ企業でも、業務委託契約自体が初めての場合で雛型の用意がないとき



契約書を紙で交わすか電子契約サービスを利用するか、契約の手段も発注者の意向に合わせることが多いです。
報告・連絡・相談を丁寧に|サービスの提供・納品


実際にサービスを提供したり、納品物を作り始めたら、定期的に進捗を報告したり、軽微な修正依頼に応じたりすることもあります。
「報・連・相(報告・連絡・相談)」を丁寧に行いましょう。
サービス提供時に必要な対応
- 指定された形式で提出する(例:Word、PDFなど)
- 納品済み・作業済みであることをメール等で明確に伝える
- 納品書や報告書が必要な場合は、あわせて送付する



オンラインでのやり取りは相手が見えない分、より一層、丁寧なコミュニケーションを心がけましょう。
請求はどうすればよい?|請求~入金までの具体的なプロセス
基本的には、後払いをベースとしながら、請求~入金までのプロセスを解説します。
前払いでも、後払いでも、請求~入金までの実務は同じです。
請求書の発行方法


副業であっても、請求書はきちんと発行しましょう。
見積書や契約書と違い、請求書は省略しない方が良いです。
メールやLINEの本文だけで請求をすると、発注者が会計の処理に困ってしまいます。
請求書の発行について、具体的な手続きを解説します。
請求書の記載事項
請求書を作成時に、記載が必要な項目は以下のとおりです。
事前に発行した見積書や納品書をコピーして請求書に作り替えるとスムーズに対応できます。
請求書への記載が必要な項目
- 請求日
- 請求書番号(任意)
- 宛先(クライアント名)
- タイトル・件名等(例:●月分の請求書作成業務)
- 取引日
- 業務内容
- 数量
- 金額(消費税の有無を明記)
- 支払期限(請求書発行から7日以内、翌月末払い等)
- 振込先口座
請求書の発行タイミング
請求書の発行タイミングも、事前に発注者と合意をしておきます。
クライアントの希望に合わせて、柔軟に対応しましょう。
よくある請求書発行タイミング
- 契約の締結時(前払い)
- 納品が完了したタイミング(後払い)
- 月末締め(後払い)
請求書の作成方法
見積書と同様に、請求書のテンプレートはExcelでOKです。
ネットで調べてもらえれば、無料でダウンロードできる請求書のテンプレートが見つかると思います。
あるいは、会計ソフトの請求書発行機能や、無料のクラウドサービスを使うのもお勧めです。
入金を確認する(銀行振込の場合)


銀行振込を指定して請求書を発行した場合は、毎回、必ず入金確認をしましょう。
指定した期日どおりに、100%正しい金額が入金されると思わないほうが良いです。
例えば…
前払いで合意し、入金確認後にサービスを開始するという話だったが、支払期限になっても入金が確認できない
納品後に請求書を発行したが、入金期日を迎えても、入金がされないままになっている
ビジネスをしていると、このようなことはよく起こります。
そんなときは…
行き違いでしたら申し訳ないのですが…
期限になってもお支払いが確認できないため、ご連絡差し上げました
と丁寧に連絡しつつも、毅然と対応しましょう。
取引先が忙しくて振込みを忘れたしまっただけかもしれませんし、お金が足りなくて期日までに支払えない事情があったかもしれません。
ですが、どんな場合にも、未入金は未入金です。
マインドとして「サービスの対価としてお金をいただくのは当然のこと」という認識を持ちましょう。



きちんと請求し、回収することまで含めてビジネスと心得えましょう。
【番外編】副業初心者の味方「プラットフォーム」を活用する


ここまで、契約書や請求書の対応方法を詳しく解説してきましたが、それでもやはり
契約書や請求書を自分で作るのが不安…
という場合には、スキルシェアやクラウドソーシングのプラットフォームを活用するのがおすすめです。
代表的なサービス
- タイムチケット:時間単位でスキルを販売
- ココナラ:事務作業をパッケージ販売できる
- クラウドワークス:タスク・プロジェクト形式で案件を獲得
これらのサービスでは、クレジットカード払いと同様に、未払いリスクがなく、やりとりもプラットフォーム内で完結するので、副業初心者には安心できる環境です。
プラットフォームで実績を積むことで、将来的に直請け案件を受けるときの「信用」や「実績」にもつながります。
ただし、デメリットとして、管理手数料や振り込み手数料が差し引かれた金額が入金されることは覚えておきましょう。



わたしも、一番最初はクラウドワークスで資料作成のお仕事を受注して、実績を作りました!
💡 スキルシェア・アプリを使って契約をしたいと思った方は、こちらの記事をご覧ください。副業でよく使われているサービスに関して、具体例を挙げながら詳しく解説しています。


契約・納品・請求は流れを掴めば「自分の型」ができる(まとめ)


副業で初めて仕事の依頼を頂いたとき、あるいは売上が発生したとき、
ちゃんと対応できるかな…?
という不安を感じるのは当然のことです。
最初のうちは、調べながらゆっくりでも構わないので、順を追って、各プロセスを確実に実施しましょう。
契約・納品・請求の実務で大切なこと
- 契約内容を明確にし、その証拠を残しておく
- 金額や支払条件等は、一番最初に決めておく
- 請求書発行後は、忘れずに入金対応も行う
まだ会計ソフトを導入していない場合は、見積書や請求書作成する際にもEXCEL対応で問題ありません。
ネット上で、いくらでも無料のテンプレートが入手できます。
あるいは、既にご紹介したMisocaやINVOYといった無料で使える請求書作成ツールを使うのもお勧めです。
まずは、お金をかけずにできる方法で始めてみましょう。
そして、回数を重ねがながら、自分に合ったやり方、お客様にとって快適な方法を見つけていきましょう。
お金の対応をしっかりとやっておくだけで、お客様に信頼感を与えることができるはずです。
自分らしい働き方を実現するために、「ビジネスの基本」も少しずつ身につけていきましょう。
丁寧な仕事の積み重ねが、やがて大きな自信につながります。



オンライン事務代行では「やりとりが丁寧で安心感がある」そんな人物が最終的に選ばれます。
💡 副業に使う銀行口座とクレジットカードは、プライベートと切り分けて管理されることをお勧めします。なぜ分けた方が良いのか、何から始めたら良いか、詳しく知りたいと思った人はこちらの記事が参考になります。


💡 副業が軌道に乗ってきたら、会計ソフトの導入を検討しましょう。どんなソフトを導入したら良いか迷っている人は、こちらの記事を参考に検討してみてください。

