「何のために仕事をしているのか?」という問いに対して、「お金を稼ぐため」という答えが省略されることも多い昨今。
仕事にやりがいを求める風潮もあり、「今の仕事にやりがいを感じられない」という理由で転職をする人も一定数いると思います。
とはいえ、令和の日本で生きていくためには、ある程度のお金が必要ですし、わたしは「お金を稼ぐために働く」ということを肯定的に捉えています。
この記事では、「仕事にやりがいを求める」って結構ムズイ課題なんだっていうことを、マズローの「欲求5段階説」という心理学の理論を使いながら解説していきます。
自分が仕事に何を求めているのか、ご自身のキャリアについて振り返ってみるきっかけになれば幸いです。
マズローの「欲求5段階説」とは?
あなたは、マズローの「欲求5段階説」という言葉を聴いたことがありますか?
アメリカの心理学者であるアブラハム・マズローが提唱した理論で、人間の欲求を5段階に分けものです。
心理学ではポピュラーな理論ではないかと思いますが、わたしたちのキャリアを考える上でも役に立つ理論です。
初めて聞いた方のために、まずは、マズローの「欲求5段階説」を簡単にご紹介します。
「欲求5段階説」はピラミッド状の序列で表されています。
マズローの欲求5段階説
- 1段階目:生理的欲求
- 2段階目:安全欲求
- 3段階目:社会的欲求
- 4段階目:承認欲求
- 5段階目:自己実現欲求
低階層の欲求が満たされると、より高次の階層の欲求を欲すると言われています。
5段階の中では、自己実現欲求が最も高度な欲求です。
生理的欲求(1段階目)
生理的欲求とは、人間の生命維持に必要な活動を求める欲求です。
生理的欲求の例
- 睡眠欲
- 食欲
- 排泄欲
- 性欲
といった本能的な欲求が当てはまります。
安全欲求(2段階目)
心身ともに安心して生活できる環境を望む欲求です。
具体的には、以下のような願望が当てはまります。
安全欲求の例
- 経済的に安定するための賃金
- 精神的なストレスがない環境
- 暴力・事故・災害に遭うリスクの低さ
社会的欲求(3段階目)
人との関わりに関する欲求です。
「社会的欲求」は、「帰属欲求」や「愛と所属の欲求」とも呼ばれます。
仕事を通じて他者との関わりを持つことで、社会的欲求が満たされることが多いです。
具体的には、以下のような願望が当てはまります。
社会的欲求の例
- 地域社会や会社、学校などのコミュニティに所属したい
- 友人や家族、恋人と関わり受容されたい
承認欲求(4段階目)
他人から自分の才能や存在を認められたいと思う欲求です。
承認欲求を満たすことで、自信が生まれます。
また、仕事へのモチベーション、自己研鑽や健康維持等の原動力にもなる欲求です。
具体的には、以下のような願望が当てはまります。
承認欲求の例
- 自分の努力を褒めてほしい
- 自分の活躍を多くの人に知ってほしい
- 他人よりも自分の方が優れているとわかってほしい
- 自分の仕事を評価してほしい
- 仕事の成果を認められたい
- 出世したい
自己実現欲求(5段階目)
自己実現欲求とは、理想の自分になりたいと願う欲求です。
人間が最終的に到達するとされている願望が、5段階目の自己実現欲求です。
具体的には、以下のような願望が当てはまります。
自己実現欲求の例
- 幸せな家庭を築きたい
- 仕事で成功を収めたい
- 働かないで趣味に没頭して生きていきたい
「欲求5段階説」とキャリアがどう関係するか?
もし、あなたが「仕事=自己実現」という感覚があって、「仕事を通じて、自己実現できている」と感じられているならば、それはかなり高度な欲求が満たされていると言えます。
反対に「仕事を通じて自己実現できていないかも…」と思った方も、心配しなくて大丈夫です。
その悩み自体が、実は「高尚な悩み」だからです。
何を得るために働いているのか?
令和の日本で生きていくためには、ある程度のお金が必要です。
「何のために仕事をしているのですか?」という問いに対して、「お金を稼ぐため」という答えが省略され、「やりがい」が議論されることも多い昨今。
とはいえ、1段階目の「生理的欲求」や2段階目の「安全欲求」を満たすことは、仕事をする上で最も基礎になる欲求ではないでしょうか。
一方で、「お金を稼ぐため」以外の目的で働きたいという属性の方たちが、一定数いるのも事実です。
- 配偶者の収入があるので不自由はないのもの、子育てがひと段落したのでこれから働きたいと思っている専業主婦(主夫)
- 年金は十分にもらえているが、健康でいる限り働き続けたいと考えるアクティブシニア
こうした人々にとって、働くことは3段階目の「社会的欲求」以上の欲求を満たすために仕事をしていると言えそうですね。
仕事に何を求めるか、仕事から何を得ているかは、人それぞれ違うということがお分かりいただけるのではないかと思います。
「仕事=やりがい」は結構ハードルが高い
わたしはもともと15年間、大学職員や会社員として事務の仕事をしてきました。
当然のことながら、これまでお金を稼ぐために働いてきましたし、今だってお金を稼ぐために働いています。
それは、主に事務の仕事です(安全欲求)。
今はフリーランスとして事務をさせてもらっていますが、幸いにも、クライアント企業のメンバーの一員として信頼してもらい、一定役割を担っています。
また、わたしは複数のオンラインサロンに所属し、人との繋がりという意味でも満たされていると感じられています(社会的欲求)。
そして、わたしにとっては、フリーランスとしてご飯を食べていけることが、「他者(社会)から自分の才能を認めてもらっている」と感じられる根拠になってます(承認欲求)。
これまで散々キャリアに悩んできたわたし自身の経験、そしてキャリアに関する学びを、キャリアで悩んでいる誰かに活用してもらいたい
これが、わたしがキャリアに関する記事を執筆したり、キャリアに悩んでいる方向けに講座を実施する理由になっています。
そして、わたし自身、ようやく「やりがいのために働く」に近づけたかなと思っています(自己実現欲求)。
欲求に優劣はない!
マズローの欲求5段階説はピラミッド型で説明されるのですが、上層の欲求を叶えている人が尊いのでは?と思うかもしれませんが、決してそういうわけではありません。
例えば、わたしと同じ事務の仕事に就いている場合であっても、「お金のために働く人(安全欲求)」と「自分らしい生き方のために働く人(自己実現欲求)」がいます。
どの欲求を満たしているかは、その人の状況により異なります。
ここで、人と比べることや自分がどの段階にいるのかに優劣をつけることには、あまり意味がありません。
人は、それぞれの成長の段階が違います。
ご自身が今どの段階にいるのかを振り返るための手段でり、一つの指標に過ぎないということを心に留めておきましょう。
必ずしも「仕事=自己実現」とは限らない(まとめ)
マズローの欲求5段階説を通じて、仕事と「自分らしさ」や「自己実現」がどのように結びつくかをお分かり頂けたでしょうか。
生理的欲求から自己実現欲求まで、各段階がどのように仕事の満足度に影響するかを解説しながら、「やりがいのある仕事に就く」ことは、実は高尚な理想だったということをお伝えしました。
もし、自分の働き方に「もやもや」を感じているのであれば、ご自身の悩みや行き詰まりがどの段階の欲求に課題がありそうか、振り返ってみるのも良いと思います。
働き方人それぞれ、家族環境や経済的な背景にも左右されます。
ご自身のキャリアを人と比べることにはあまり意味がありません。
ベターな選択を積み重ねることで、段階的なアプローチを踏み、焦らず少しずつ理想の働き方に近づけていきましょう。
いきなり大きくは変われなくとも、日常の中での小さな選択から、ベターなものを積み重ねていきましょう。
💡 仕事のやりがいや自分が求める価値について、「自分で手を動かして自己分析をしてみたい」と思った方はぜひこちらの記事も参考にしてみてください。