インターネットの発達により、個人が多様なキャリアの情報を得ることができるようになりました。
また、テレビ会議システムやスキルシェア・アプリなど、便利なサービスが増えてきたことで、個人でも簡単にビジネスを始めることができる時代になりました。
キャリアの選択肢が増えるのは喜ばしいことではありますが、現代に生きるわたしたちにとっては選択肢も増えたからこそ、自分の価値観をしっかりと持っておく必要が出てきています。
この記事では、キャリアの棚卸しや自己分析によく使用されるライフラインチャートの書き方についてご紹介します。
ライフラインチャートを作成することで、自分が何を大切にしているのか、仕事のやりがいや価値観をより明確に理解することができます。
ライフラインチャートとは
引用:キャリア・プラン作成補助シート(在職者用)記入例|厚生労働省
ライフラインチャートとは、自分のこれまでの人生を幸福度という尺度で1本の曲線で表現したものです。
表の横軸は時間軸、縦軸は自分が感じている幸福度を表しています。
ライフラインチャートを作成することで、自分の人生でどのような基準で選択してきたかのか、つまりは自分の価値観を知ることができるようになります。
ライフラインチャートを作成する目的は?
ライフラインチャートを作成目的としては以下の4が挙げられます。
順番に見ていきましょう。
主な目的
- 自分のキャリアを客観的に振り返ることができる
- 自分の価値観が分かる
- 他人に共有することで新たな発見がある
- 今後のキャリア形成に役立つ
自分のキャリアを客観的に振り返ることができる
ライフラインチャートでは人生の重要な出来事、例えば学校卒業や結婚、新しい仕事の始まり、仕事での成功や失敗などを振り返ります。
過去の出来事を振り返ることで、どのような出来事が自分に大きな影響を与えたのかを可視化することができます。
振り返りの作業によって、重要な出来事の中で感じたあなたの感情や心理的な影響を客観的に理解することができます。
自分の価値観が分かる
ライフラインチャートは、人生の出来事や経験を時系列で視覚化する作業です。
どのような出来事に対してポジティブ・ネガティブを捉えているかを整理することで、自分が何を大切にしているのか、何に対して情熱を持っているかなどの価値観もわかりやすくなります。
他人に共有することで新たな発見がある
ライフラインチャートを他人に共有することで、新たな発見や気づきを得られることがあります。
例えば、ある出来事があなたにとっては辛い経験だったとしても、他人から見ると、そこに成長や学びの重要な要素を見出すことがあるかもしれません。
異なるバックグラウンドや価値観を持つ人の視点を取り入れることで、自分自身についての理解が深まるとともに、新たな気づきが得られます。
今後のキャリア形成に役立つ
ライフラインチャートはキャリア形成にも非常に役立ちます。
過去の経験や感情の変化を視覚的に整理することで、これまでのキャリアの変遷や一貫性が可視化され、客観的に把握することができます。
これまで歩んできた人生の出来事やその裏にあった感情や価値観を理解することで、自分の軸がはっきりとするため、今後のキャリア形成に役立つでしょう。
ライフラインチャートをどんなツールで作るか?
ライフラインチャートは手書きでも、パソコンで作成することも可能です。
やりやすい方法で作成しましょう。
手書きで作成する
普段パソコンを使わない方でも、手軽に作成することができます。
既存のワークシートを使って作成することもできます。
印刷できる環境がない場合は、ノートのように罫線のある紙や方眼紙を使うのがおすすめです。
フリクションボールペンやシャープペンシル等、修正しやすい筆記用具を使いましょう。
パソコンを使って作成する
EXCELやPowerPointでを使って作成します。
(Googleスプレッドシート、Googleスライドも可)
何度も書き直すことが出来るメリットがあります。
また、保存の仕方を工夫すれば、数年後に振り返ることもできるでしょう。
文字を打つのには適していますが、点や線の描画には慣れるまで少し手間がかかるかもしれません。
ライフラインチャートの作成手順
それでは、次にライフラインチャートの作成手順①~④についてご説明します。
【手順①】人生の出来事を振り返る(主に印象に残っているもの)
いきなりライフラインチャートを描き始めるのではなく、まずはあなたの人生について思い出す作業をしましょう。
具体的には、それぞれの年齢ごとに以下のような項目について振り返っていきます。
出来事(例)
- 人生の転機
例:就職、転職、昇任・降格、結婚、出産、育児、介護、病気、怪我等 - 成功体験
例:嬉しかった経験、楽しかった経験、達成感や充実感が得られた経験等 - 失敗体験
例:辛かった経験、苦しかった経験、嫌だったこと等
大切なのはただ過去の事実をまとめるだけでなく、なぜその出来事が転機(成功体験、失敗体験)だと思ったのか、そのときの事実に対する自分の感情もセットで振り返りましょう。
理由は、「なぜ」の部分にあなたの行動パターンや価値観が隠れているからです。
自己分析では、誰かと優劣を比較したり、競い合ったりする必要はありません。
自分の選択基準を探していくことだけに集中しましょう。
人と比べて特別な体験を探そうとせずに、身近な経験、小さな出来事であってもあなた自身がどう感じたかで判断しましょう
【手順②】点を打つ
【手順①】で思い出した出来事をもとに、それぞれの出来事ごとに満足度が高かったのか、低かったのかを考えて、グラフに点を打っていきます。
横軸には、目安としてあなたの年齢を書き込んでおきましょう。
キャリアについて考察を深めるときは、就職して以降のライフラインチャートだけでもOKです。
時間に余裕がある場合は、幼少期や学生時代も含めて作成しても良いでしょう。
【手順③】キーワードを書く
【手順②】点を打った場所に、出来事のキーワードを書いていきます。
自己分析は誰かに見せるものでもないため、自分が思い出せる内容のキーワードや簡単な文章が書いてあれば問題ありません。
具体例
- A社に就職
- B社に転職
- 人事異動(X部→Y部)
- 結婚、離婚
- N人目の出産
- 交通事故
- 病気休職
【手順④】点を線でつなぐ
最後に、ライフラインチャートの点と点を線でつないでいきます。
上がり下がりのある曲線グラフが描けたのではないでしょうか。
ここまでできたら、ライフラインチャートは完成です。
ライフラインチャートの振り返り
ここからは、自分の価値観を考察する作業に入っていきます。
ライフラインチャートの曲線が「上がっている時期」と「下がっている時期」を中心に見ていきましょう。
曲線が上がっている時期
ライフラインチャートにおいて、曲線が上がっている時期は、あなたの人生でポジティブな出来事や成功体験が多かった時期に当たります。
これらのポジティブな出来事に共通する要因を分析することで、自分がどのような環境や条件で力を発揮しやすいかが明確になります。
- なぜ満足していたのか
- どうして満足することができたのか
これらを考えて、思い付いたことを書き出してみましょう。
例えば、「新しいことに挑戦をした時に自己成長を感じられる」と気づいた場合、今後のキャリア形成やプライベートの過ごし方においても、自発的に新しい出来事を経験してみましょう。
また、人間関係の良し悪しが満足感に大きく影響している場合には、仕事を含めた日常生活の中で、意識的に他人との関わりを大切にするように努めるのが良いでしょう。
曲線が下がっている時期
ライフラインチャートの曲線が下がっている時期は、一般的には困難や挫折、課題に直面した時期を示しています。
この時期を振り返ることで、自分がどのようにこれらの壁に立ち向かい、乗り越えてきたかを再認識できます。
- なぜ不満だったのか
- その状況をどうやって乗り越えられたのか
これらを考えることで、あなたが幸せでないときの傾向や、困難や挫折を乗り越えるための行動パターンがわかります。
ポジティブな経験だけではなく、困難があったからこそ得られた成長や気づきを改めて確認することができます。
過去の失敗や挫折を俯瞰的に見ることで、これから自分がどんなことを意識して仕事に取り組めば良いか、前向きな姿勢で将来を考えることにも繋がります。
【参考】わたしのライフラインチャート(2024年6月27日時点)
人生の中で印象に残った出来事(主に仕事に関すること)
実際に作成したライフラインチャート
参考までにわたしのライフラインチャートをお見せします。
わたしの場合は、ライフラインチャートの曲線が上下している箇所の多くが人間関係に影響を受けていることがわかりました。
一方で、どんな仕事内容をしているかや、一般的に考えるとポジティブな経験として捉えられがちな出来事もライフラインチャートには全く影響していませんでした。
例えば…
- 大学職員時代に主任試験に合格して昇任したこと(29歳)
- 前々職の人材紹介会社で新規事業プレゼン大会に出場して優勝した経験(33歳)
は、わたしの人生で印象に残る出来事にはランクインしていませんでした。
仕事への満足度が人間関係に影響を受けやすいので、取引先を自分の意思で決められるフリーランスという働き方が自分には合っているなと改めて思いました!
ライフラインチャートをもとに対話する
せっかくなので、1人でライフラインチャートを作成して終わりにするのではなく、ぜひ出来上がったあなたのライフラインチャートを周りの人に話してみてください。
家族や友人、同僚など、あなたの周りにいる人は、あなたとは違う人生を歩んできているため、価値観や物の見方が異なります。
このため、あなたの身に起こった出来事について、違う視点や異なる意味を与えてくれることがあります。
過去の出来事を言葉に出しているうちに、自分でも気づかなかった自身の考えや価値観、感情等に気づくこともあります。
ライフラインチャートを使った自己理解(まとめ)
ライフラインチャートとは、自分のこれまでの人生を幸福度という尺度で1本の曲線で表現したものです。
ライフラインチャートを作成すると、自分がどのような時期に何を経験し、どのように感じたかを一つの線で結びつけて見て取ることができます。
ライフラインチャートの作成は以下の4つの手順で行います。
- 人生の出来事を振り返る(主に印象に残っているもの)
- 点を打つ
- キーワードを書く
- 点を線で繋ぐ
ライフラインチャートの作成を通じて、自分が何を大切にしているのか、仕事のやりがいや価値観をより明確に理解することができます。
また、ライフラインチャートの内容を誰かにシェアすることで、内省を深めることに繋がります。
「前を向いて考えよう、未来を大事にしよう」という考え方もありますが、まずは立ち止まって過去の自分を見つめる時間を大事にしてみてください。
過去の自分を振り返る時間が、あなたの「自分らしく働く未来」に繋がります!