社会人になってから10年以上が経った今、自分の生活を振り返ってみて
「30代になっても、いまだにやりたい仕事がわからない」
「やりたいことがないこと、それ自体が悩み」
明確な夢や目標がないまま、今の仕事をこのまま続けていて良いのかな?と漠然とした不安に駆られている人もいるのではないでしょうか?
この記事では、何をやりたいのかがわからない、やりたいことが見つからないという悩みを持っている、働く30代のために「計画的偶発性理論」という考え方をご紹介します。
「計画的偶発性理論」に沿って自身のキャリアを振り返ってみることで、「やりたいこと」の捉え方が変わり、それと同時にチャンスの捕らえ方がわかるようになります。
「計画的偶発性理論」とは?
「夢や目標を決めすぎない方が良い」という主張するキャリア理論があります。
アメリカの教育心理学者、クランボルツ博士が提唱した「計画的偶発性理論」という考え方です。
計画的偶発性理論では、「個人のキャリアの8割は予想しない偶発的なことによって決定される」と言われています。
だからこそ、その偶然を計画的に自ら設計し、自分自身のキャリアをより良いものに変えていこう、というのがクランボルツ博士の主張です。
実際に何かをやり始めたとき、目標や計画をいざ実行に移してみると、想定外の出来事に遇い、最初の思い描いていた夢や目標が変化してきたという経験に心当たりはないでしょうか?
馴染みやすいのは「キャリアデザイン思考」
一方で、なりたい職業を決め、その目標を達成するためにはどんな行動を取れば良いか、逆算して考え実行に移すという考え方を「キャリアデザイン思考」と呼びます。
キャリアについて考えるときに、こちらの考え方の方が馴染みやすいと感じるのではないでしょうか?
例えば、わたしの場合は、以前から漠然と「50歳くらいになったら、事務の仕事を引退して、キャリアコンサルティングの仕事を専業にしたい」と思っていました。
この目標を実現していくためには、
キャリアデザイン思考(例)
- 何歳までに事務の仕事を辞めたら良いか
- 事務の仕事を辞めるために、いくらお金を貯めておけば良いか
- キャリアコンサルティングの専業で出来る仕事にどんなことがあるか
- キャリアコンサルタントとしての仕事を得るために、不足している知識や経験は何か
といった形で、必要な課題を明確にし、それらを一つずつクリアしていくという考え方が出来ます。
このような思考法の方が、わかりやすい、馴染みやすいと感じる人も多いと思います。
わたし自身を含め、多くの人は、子どもの頃から、先に明確な目標を設定し、目標から逆算して準備をしたり、練習を積み重ねていくという考え方で生きてきたのではないでしょうか。
目標から逆算して考える思考のことを「デザイン思考」と言います。
デザイン思考(例)
- 会社の売上目標(年間、半年、四半期と売上の目標が課され、個人がそれを達成する)
- 学生時代の受験勉強(志望校を決め、試験日から逆算して目標を立てて勉強をする)
- 運動会や学芸会などの学校行事(行事の日は予め決まっており、当日に向けて練習を積み重ねる)
デザイン思考の場合、目標設定は基本的に大きくは変わらないという前提があります。
わたしたちは、日常の中でこの「デザイン思考」を多く採用しているため、キャリアに関しても同様に考え、
- 自分の夢やキャリアの目標を明確に決めておかなければならない
- 夢や目標を設定したら、そこから逆算して、3年後、1年後までに自分がするべきことを考えなければならない
という考え方に捉われやすい傾向があると思っています。
「計画的偶発性理論」の特徴
ここで、「計画的偶発性理論」をうまく活用して、キャリア形成をした方の事例をご紹介します。
【WEB活用プランナー・Kさん(30代女性)】
彼女は、今フリーランスでお仕事をされています。
彼女はもともと会社員で、WEBマーケティングの仕事をされていました。
あることがきっかけで、会社を辞めることになり、独立してフリーランスとして働きだそうと思った当初、アフィリエイターとして食べていくつもりだったそうです。
それが、既にフリーランスとして活動している同業の先輩から、「人に教える仕事が向いていそう」というアドバイスをもらったそうです。
このアドバイスがきっかけとなり、講師業を始めることになったそうです。
そして、WEBを教えていたクライアントから「ホームページを作って欲しい」という依頼を受けて、WEB制作の仕事も始めることになったそうです。
独立当初に本人はまったく想定していなかった「WEBを人に教える」「WEB制作をやってあげる」という仕事が、今では彼女の生業となっています。
このWEB活用プランナーの女性の事例を踏まえて、計画的偶発性理論の特徴を2つご紹介します。
計画的偶発性理論の特徴
①夢や目標はどんどん変わっていく
②きっかけは周囲の人たちがもたらす
計画的偶発性理論の特徴①:夢や目標はどんどん変わっていく
1つ目の特徴として、人は年齢を重ね新しい経験を積んでいく中で、周囲の影響を受けながら、「夢や目標はどんどん変わっていく」ということが挙げられます。
今のわたしたちが思い描く夢って、あくまで「今」この時点で想像できることでしかありません。
環境の変化や自分自身が成長する過程で、夢や目標はどんどん変わっていきます。
そのことを前提として、計画的偶発性理論では「一度目標を決めたら、何としてでも成し遂げたい」というこだわりが強すぎると、せっかくのチャンスを逃してしまうという考え方をします。
計画的偶発性理論の特徴②:きっかけは周囲の人たちがもたらす
そして、2つ目の考え方は、
「夢や目標が変わるきっかけは、常に周囲の人がもたらしてくれる」
というものです。
先ほどのWEB活用プランナーKさんの事例でいうと、夢や目標が変わるきっかけをもたらしてくれたのは、同業の先輩からのアドバイスや、クライアントからの依頼でした。
常に、新しいチャンスやきっかけは「周囲の人」がもたらしてくれます。
そして、「周囲の人」と影響をKさんが前向きな姿勢で受け入れたことが、新しい夢や目標を作ることに繋がっています。
もちろん、夢や目標を持つ必要がないと言っているわけではありません。
また、夢や目標を設定したら、必ず行動する必要があります。
大切なのは、行動する中で人と出会い、周囲の人の影響を受けて夢や目標が変化していくことを受け入れることなのです。
計画的偶発性理論:5つの行動方針
周囲の人からの影響を受けて、夢や目標がどんどん変わっていったとしても、今までの経験が無駄になることはなく、それぞれが積み重なり新しい花が開くことがあります。
その花の種はどこから来たかというと、多くの場合は「偶然」であり、その「偶然」は周囲の人との出会いがきっかけとなっています。
計画的偶発性理論では、この「偶然」を自ら引き起こして、活用していくことが出来ると考えます。
「偶然」をうまく引き起こすための、5つの行動方針をご紹介します。
① 好奇心(Curiosity)
② 持続性(Persistence)
③ 柔軟性(Flexibility)
④ 楽観性(Optimism)
⑤ 冒険心(Risk Taking)
① 好奇心(Curiosity)
自分の知らない夢や目標と出会うためには、新しいことに興味・関心を持ち続ける必要があります。
② 持続性(Persistence)
「好奇心」にばかり走ってしまうと全てが中途半端になってしまいます。
ひとつのチャンスやきっかけを手にしたら、自分が納得いくまで取り組んでみることも必要です。
③ 柔軟性(Flexibility)
結果が出始めると自分を過信してしまい、人の意見を聞けなくなることあがります。
そうすると、成長しない、広がりもない状態になってしまうので、常に人の意見や新しい視点を取り入れ続ける態度が必要です。
④ 楽観性(Optimism)
新しいことをやってみると、上手くいかないことや想定外の出来事にも遭遇します。
「持続性」を維持するためには、多少の不安や不満を受け流す力が必要です。
⑤ 冒険心(Risk Taking)
「好奇心」が新たな機会を仕入れてきたら、「いっちょやってみるか」と、新たな領域に踏み出す勇気が必要です。
「偶然」を活用する5つのプロセス
「計画的偶発性理論」では、「偶然」を意図的に活用するためには、好奇心・持続性・柔軟性・楽観性・冒険心というつの習慣を大切にせよ!と説いています。
そして、5つの習慣を活用するプロセスは以下の順番です。
「偶然」を活用する5つのプロセス
好奇心(面白そうだな)
↓
冒険心(やってみよう)
↓
楽観性(きっと大丈夫)
↓
持続性(納得いくまでやってみる)
↓
柔軟性(人の意見を聞き入れる)
やりたいことが今明確になっていなくても大丈夫(まとめ)
もし、今の時点でやりたいことがわからないと悩んでいる人も、まずは「目の前のお仕事を一生懸命やってみる!」ことを心に留めておくのはとても大切です。
一生懸命に仕事に取り組むことで、これまで見えていなかった仕事の面白さや、「もっと知りたい!」といった興味・関心が出てくることがあるかもしれません。
その結果、自然とその仕事が「やりたいこと」に変わっていたということもあるでしょう。
あるいは、今自分の手元にある夢や目標がしっくりこないと感じている人がいたら、それは、自分自身の変化に目標や夢のアップデートが追い付いていないのかもしれません。
そういう場合は、自分自身の興味や関心に素直になり、行動することを続けてみましょう。
そして、行動を続ける中で人と出会い、周囲の人の影響を受けて夢や目標が「偶然」により変化していくことを楽しみましょう。