ここ数年、ネットや自己啓発本、あるいはSNSなどでは…
幸せはお金じゃ買えない
すべては心の持ちよう
といった文脈で語られているものが数多くみられます。
あなたは、このような意見に賛同できますか?
少なくとも、わたしは、「お金がなくても幸せ」という意見にあまり賛同できないタイプです。
もちろん、「お金=幸せ」ではないことはわかっていますが、一方で、「お金がなくても幸せ」とも言いきれないと考えます。
この記事では、「お金がなくても幸せ」という思想・風潮にわたしが感じている違和感を詳しく解説します。
仕事に「好きなこと」や「やりたいこと」を求めるだけなく、「稼ぎたい」という気持ちとも、正面から向き合ってもらえれば嬉しいです。
「お金がなくても幸せ」という価値観は本当か

足るを知る
お金を求めない暮らし
心の豊かさ
こういった価値観は、近年、特にSNSや自己啓発の文脈で広がっています。
ミニマリスト、丁寧な暮らし、田舎でスローライフ…
どれも「お金をかけずに満たされる」ことを尊ぶ文化です。
一方で、
お金に執着しすぎるのは見苦しい(ダサい)
物欲にまみれてる人は卑しい
といった、暗黙の空気も漂っているように思います。
日本では特に「お金=欲深さ」と見られやすく、お金の話をオープンにするのは“はしたない”とされる風潮も根強いです。
でも、これって実際にはどうでしょうか…?
やりたい習い事があったけれど、お金がなくてできなかった
お金がないことで、家族や他人に迷惑をかけてしまった
奨学金を返すのに必死で、ずっと心に余裕がなかった
そんな本音が、あなたの心の奥に押し込められていませんか?
「お金がなくても幸せ」
この言葉は、時として現実の苦しさを“ごまかすための自己欺瞞”になってしまうことがあるのです
心理学や経済学から見た「お金と幸せ」の関係
「お金がなくても幸せ」思想の信憑性より丁寧に考察するために、「お金と幸せ」の関係を心理学や経済学の視点から見てみましょう。
お金と幸せの関係①|マズローの欲求5段階で考える(心理学)

心理学者のマズローは、人間の欲求を「生理的欲求」から「自己実現」まで5段階に分けました。
(マズローの欲求5段階説)
- 1段階目:生理的欲求
- 2段階目:安全欲求
- 3段階目:社会的欲求
- 4段階目:承認欲求
- 5段階目:自己実現欲求
最もベースにあるのが「衣・食・住」といった生理的欲求・安全欲求で、これらを満たすにはやはりお金が必要です。
つまり、「お金がなくても幸せ」と言える大前提になるのは、すでに下位の欲求(生理的欲求・安全欲求)が満たされている場合に限られます。
- 安心して眠れる場所
- 安定した食事
- 必要な医療や教育
これらが欠けた状態では、心の豊かさを語ることは難しいでしょう。
💡 マズローの欲求5段階説について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。

お金と幸せの関係②| 幸福度と収入の関係は?(経済学)

アメリカのダニエル・カーネマンという経済学者の調査研究によると、「収入が上がれば幸福度も上がり続ける」と言われています。
また、日本の場合、大阪大学特任教授の大竹文雄さんが行った調査によると、
- 年収800万円(世帯年収1500万円)まで
- 金融資産1億円まで
収入が上がるほど幸福度も上がりやすく、それ以上になると増加率は緩やかになるという結果が出ているそうです。
こうした経済学の調査研究からも、「お金」と「幸せ」には一定の相関関係があり、「お金がなくても幸せ」とは言いづらいことがはっきりとわかっています。
お金がもたらすのは「快適さ」「自由」「選択肢」
ここまで読み進めていただいて、「お金」と「幸せ」には関係があること、「お金があったほうが幸せになれそうだ」ということが、ご理解いただけたと思います。
次に、お金があることで得られる幸せは何かを具体的に見ていきましょう。
お金によって得られるメリットは、大きく分けると「快適さ」「自由」「選択肢」の3つがあります。
お金がもたらすもの①| 快適さ

(具体例)
- 座り心地のいい椅子やデスクに投資し、体の負担が減る
- 掃除ロボットや乾燥機付き洗濯機などの家電で、家事の手間が激減
- 飛行機・新幹線・タクシーを活用して、移動で疲弊しない生活が可能になる
お金がもたらすもの②| 自由

(具体例)
- 嫌な上司に耐え続けなくても良い、転職や独立の選択が取れる
- 働く時間・場所を選べるようになり、ライフスタイルに合わせられる
- 家計に余裕があるため、学びたいこと・興味のあることに挑戦できる
お金がもたらすもの③| 選択肢

(具体例)
- 住む場所を都市・郊外・自然の多いエリアなどから自由に選べる
- 安さだけでなく、品質・健康志向の商品を選ぶことができる
- 子どもの教育や習いごとに、経済的理由で妥協せずに選択できる

わたしは単身家庭で育ったので、学習塾には行けなかったし、国立大学しか行かせられないと言われて育ちました!(=選択肢が少ない)
とはいえ、すべてをお金で解決できるわけではない
お金があることで、必ずしも幸せになれるとは限りませんが、「幸せになれる選択肢を増やせる」のは間違いなく事実です。
ですが、ここでもう一つ、忘れてはいけない大切な視点があります。
「お金があったほうが幸せ」である可能性が高いことはご理解いただけたと思うのですが、同時に、お金があってもすべての問題が解決できるわけではありません。
お金で買えないものも、当然ながら存在する


当然のことながら、お金があっても買えないものだって存在します。
お金では買えないもの(例)
- 家族との時間
- 心の安定
- 健康的な身体
- 仕事のやりがい
こうした価値は、「お金では買えない」領域にあります。



当然ですが「幸せ」そのものはお金では買えません!
自分が「幸せを感じやすい環境」を作る


ですが、お金では買えない領域で得られる「幸せ」にアプローチするためにも、お金が必要なことも事実なのです。
「幸せを感じやすい環境」を作る(例)
- 家族との時間
→お金があれば、労働時間を減らし、家族との時間をより多く作れる - 心の安定
→お金があれば、休息やリフレッシュの機会をより多く作ることができる - 健康的な身体
→ジムや食事にお金をかけて、効率よく健康な身体を作ることができる - 仕事のやりがい
→お金があったほうが、お金以外の要素を重視して仕事を選ぶことができる
お金で得られない領域にある「幸せ」に対しても、お金の使い方次第で、自分が「幸せを感じやすい環境」を作ることができるのです。
つまり、「収入を増やす」ということは、自分自身の「幸せ」を効率よく得るための効果的なアプローチなのです。
「お金がなくても幸せ」は、正直9割が嘘だと思う(まとめ)


「お金がなくても幸せ」
——確かに、それが真実である場面もあるでしょう。
自給自足の暮らしや無人島生活を選択したら、話は別かもしれませんが、令和の日本社会で暮らすには、衣食住や安心や安全に必ずお金が必要です。
そして、現実的に考えると…
- お金があることでストレスを減らせる
- 自由な選択ができる
- 未来に対する不安が軽くなる
というように、お金があることによって“幸せを感じやすい”環境は確実に増えるのです。
お金で「幸せ」そのものを買うわけではありませんが、お金は幸せになるための土台を整えるツールです。
あなたは、「やりたい仕事」や「好きな仕事」ができたらそれだけで満足でしょうか?
正直なところ「お金がなくても幸せ」と言っている人の多くは、「自己欺瞞(じこぎまん)」ではないかと、わたしは思っています。
現状に納得したふりをするのではなく、自分の本音にも正直になって、しっかりと「稼ぐ力」を身に付けていきましょう。