どうして営業はルールを守ってくれないの?
経理の言い方、ちょっと冷たくない?
職場で何かと摩擦が起こりやすい、経理と営業の関係です。
この記事では、経理の立場から見た営業とのすれ違いの原因と具体的な対処法をセットで解説します。
大事なポイントを理解した上で、部署間での摩擦からくるストレスを減らしましょう。
すれ違いの原因と対処法がわかれば、仕事を円滑に進められるように工夫できるようになります。
経理と営業は仲が悪い?対立しがちな理由8選
経理と営業、それぞれの部署にはそれぞれの「当たり前」があります。
この「当たり前」のズレが、対立の火種となることが少なくありません。
まずは、なぜ対立が生まれやすいのか、その具体的な理由を見ていきましょう。
経理と営業が対立しがちな理由8選
- 数字への意識のズレ
- 締め日や請求処理に対する感覚の違い
- コンプライアンス意識の差
- 入金管理・回収責任の認識のズレ
- 請求書処理の分担があいまい
- 売上計上のタイミングの違い
- 報酬制度・モチベーションの違い
- お互いの業務への理解不足
対立しがちな理由①|数字への意識のズレ

営業は「いかに売上を上げるか」が至上命題です。
目標達成のために、多少の無理やゴリ押しも辞さないケースがあります。
一方、経理は「いかに数字を正確に記録し、会社の財産を守るか」が重要です。
ま売上だけでなく、経費や利益、そして資金繰り全体を俯瞰して見ています。
この意識のズレが、例えば「この経費、本当に必要だったの?」という経理側の疑問と、「売上を上げるためだ!」という営業側の反論を生む原因になります。
向いている方向が違うからこそ、数字への意識も異なってきます。
対立しがちな理由②|締め日や請求処理に対する感覚の違い

締め日、もう過ぎちゃってるんですけど…
なんでこの請求書、まだ処理されてないんですか!?
こんな会話、社内で耳にしたことはありませんか?
営業は
- とにかく早く請求書を出して、お客様に満足してもらいたい
- 今期の売上に計上したい
と考えがちです。
一方、経理は
- 締め日までに完璧な書類が揃っていること
- 正確な処理をすること
を重視します。
締め日ギリギリに慌てて資料を提出する営業と、それを正確に処理しようと焦る経理…
この時間軸のズレが、お互いのイライラの原因になることはよくありますよね。
対立しがちな理由③|コンプライアンス意識の差

営業は、お客様との関係構築や契約成立を最優先するあまり、時に少々グレーな経費計上や、ルールに則らない処理をしてしまうことがあります。
彼らにとってはそれが「お客様のため」だったり、「スピード感」だったりするわけです。
しかし、経理は会社のコンプライアンス(法令遵守)の番人です。ルールから外れた処理は、会社の信用問題や税務上のリスクに直結します。
そのため、経理は「なぜこの処理はルール違反なのか」「なぜこれは認められないのか」を厳しく指摘せざるを得ません。
この「会社を守る」意識と「売上を追う」意識の違いが、摩擦を生みやすいのです。
対立しがちな理由④|入金管理・回収責任の認識のズレ

売上を立てるのは営業の仕事ですが、その売上が最終的にお金として会社に入ってくる「入金」まで見届けるのは、実は経理の重要な役割です。
営業は契約を取ってしまえば一安心と思いがちですが、経理は「入金されて初めて売上が確定する」という視点を持っています。
そのため、お客様からの入金が遅れたり、滞ったりすると、経理は「なぜ入金されないのか」「営業は状況を把握しているのか」と、営業に対して確認や督促を求めることになります。
営業からすれば「もう契約は取ったのに…」と不満に感じることもあり、この認識のズレが軋轢を生むことがあります。
対立しがちな理由⑤|請求書処理の分担があいまい

これって、うちでやるんでしたっけ?
この書類は誰が用意するんですか?
請求書発行や関連書類の準備について、部署間の役割分担が明確でないと、お互いに「相手がやるべきこと」と思ってしまい、結果として誰もやらない、あるいは二度手間になるといったトラブルが発生します。
特に、イレギュラーな取引があった場合など、どちらの部署が担当するのか曖昧になりがちです。
責任の所在が不明確な業務は、スムーズな連携を阻害する大きな要因になります。
対立しがちな理由⑥|売上計上のタイミングの違い

営業は、お客様から注文があった時点や契約を締結した時点で「売上が立った」と考えがちです。
しかし経理では、実際に商品を引き渡したりサービスを提供したりした時点(債権が確定した時点)で売上を計上するという会計ルールがあります。
特に、長期プロジェクトや納品までに時間がかかる案件では、営業の考える売上と経理が計上する売上の間にタイムラグが生じ、これが「なんで今月の売上が少ないんだ!?」といった誤解や不満につながることがあります。
対立しがちな理由⑦|報酬制度・モチベーションの違い

営業職の多くは、個人の売上目標達成度に応じてインセンティブが支給されるなど、成果主義の報酬制度が適用されていることが多いです。
そのため、「いかに売上を上げるか」という個人目標への意識が強くなります。
一方、経理職は、個人の売上目標というよりは、チームや会社全体の正確な会計処理や効率的な業務遂行が評価されます。
個人の頑張りが直接的に報酬に反映されにくい構造のため、営業のような前のめりな姿勢とは異なるモチベーションで仕事に取り組んでいます。
このモチベーションや評価軸の違いも、お互いの業務に対する理解を阻害する要因となり得ます。
対立しがちな理由⑧|お互いの業務への理解不足

結局のところ、多くの対立の原因は相手の仕事に対する理解が不足していることに尽きます。
営業は経理の「正確性」や「ルール遵守」の重要性を軽く見てしまいがちで、経理は営業の「目標達成へのプレッシャー」や「スピード感」を理解しにくい傾向があります。
自分たちの仕事が一番大変だ
という思い込みや、相手の業務プロセスを知らないが故に、
なぜそんなに時間がかかるのか
なぜそんなことを言うのか
といった不満が募ってしまい、結果として部門間の壁が高くなってしまうのです。
経理と営業の連携を円滑にするための対処法8選
対立の原因が分かったところで、次はお互いが歩み寄り、会社全体としてより良い結果を出すための具体的な対処法を見ていきましょう。
ちょっとした工夫で、驚くほど関係性が改善されることもあります。
ポイントは、「押しつけ」ではなく「伝え方」や「仕組み化」で自然に協力を引き出すことです。
連携を円滑にする方法8選
- 利益や全体最適を視覚化して伝える
- リマインドと業務の「やりやすさ」を設計する
- 「現場視点」でリスクを伝える
- 入金の重要性を「営業にも見える化」する
- 請求書業務分担を明文化する
- 営業が理解できる言葉で伝える
- 相互理解とねぎらいで埋める
- 日常的な「接点づくり」が効く
連携を円滑にする方法①|利益や全体最適を視覚化して伝える

営業は売上、経理はコストや正確性、それぞれの視点ではなく、「会社全体の利益」という共通目標を意識してもらうことが重要です。
例えば、経理側から営業に対して
この経費を削減すると、あなたの売上が〇〇円アップしたのと同じくらい利益が増えますよ
といった具体的な数字で伝えることで、単なるコストカットではなく、会社への貢献度として認識してもらいやすくなります。
売上だけでなく、粗利や営業利益など、もう少し踏み込んだ「利益」の概念を共有し、会社全体で最適化を目指す意識を醸成することが大切です。

「利益」の概念をもってもらえるよう、営業に教育するくらいの気概で良いと思います
連携を円滑にする方法②|リマインドと業務の「やりやすさ」を設計する


締め日や提出物の遅延は、多くの場合「うっかり忘れ」や「後回し」が原因です。
経理側から
締め日〇日前です
〇〇の書類、未提出ですよ
といった丁寧なリマインドを定期的に送ることで、営業は忘れずに対応できます。
さらに、提出物のフォーマットを分かりやすくしたり、提出方法を簡略化したりと、営業が「業務をやりやすい」ように設計することも重要です。
例えば
- 経費精算のシステムを直感的に使えるものにする
- 申請に必要な項目を減らす
などです。
ルールを厳しくするだけでなく、ルールを守りやすい環境を整えることが、結果的にスムーズな連携につながります。



業務の設計で、経理・営業、双方のストレスを減らしましょう
連携を円滑にする方法③|「現場視点」でリスクを伝える


経理が「これはルールだからダメ」と頭ごなしに言うだけでは、営業は反発するばかりです。
なぜそのルールが必要なのか、そのルールを破ると会社にどんなリスク(税務調査、罰則、信用失墜など)があるのかを、営業がイメージしやすい「現場視点」で具体的に伝えることが大切です。
この処理だと、もし税務調査が入った時に〇〇万円の追徴課税になる可能性があります
この請求書が滞ると、来月の給料が払えなくなるかもしれません
など、具体的な影響を伝えることで、営業も「なるほど、それは困る」と理解しやすくなります。



営業の立場でイメージしやすい「例え話」が有効です
連携を円滑にする方法④|入金の重要性を「営業にも見える化」する


営業は売上を上げるのが仕事ですが、その売上が確実に入金されることで初めて会社のキャッシュフローが成り立ちます。
経理は、営業が獲得した売上がいつ、いくら入金されるのか、そして未入金があれば誰が担当している案件なのかを「見える化」して共有することをおすすめします。
例えば…
- 営業がアクセスできる共有フォルダに「入金予定リスト」や「未入金リスト」を作成し、随時更新する
- チームミーティングで定期的に入金状況を共有する場を設ける
といった方法が取れます。
営業も入金状況を把握することで、「自分の売上が入金されて初めて仕事が完了する」という意識を持つようになります。



営業側に未入金を「自分事」と思ってもらえるように、経理から能動的に働きかける姿勢を持ちましょう
連携を円滑にする方法⑤|請求書業務分担を明文化する


「これは営業がやるべき」「いや、経理の仕事でしょ」といったトラブルを防ぐためにも、請求書に関する業務の分担を明確に言語化し、文書化しましょう。
例えば…
- 契約書の確認は営業
- 請求書の発行は経理
- 入金確認は経理、ただし未入金時の連絡は営業が第一担当
といった具合です。
新入社員が入った際にも、このルールを見ればすぐに理解できるようにしておくことが理想的です。
あいまいさをなくすことが、スムーズな業務連携の第一歩です。



役割分担を明確化しつつも、少しだけ垣根を越えて、お互いサポートしあえるとベストです
連携を円滑にする方法⑥|営業が理解できる言葉で伝える


経理は専門用語を使うことが多いですが、営業にとっては「チンプンカンプン」なことも少なくありません。
経理が営業に何かを依頼したり説明したりする際は、できるだけ専門用語を使わず、分かりやすい言葉を選びましょう。
例えば…
- 未収金ではなく「まだ入金されていないお金」
- 減価償却ではなく「固定資産の価値が時間とともに減っていくこと」
といった具体的な表現に置き換えるなどです。
専門知識を噛み砕いて伝える努力は、相手の理解を深め、円滑なコミュニケーションを促します。



自分の言葉ではなく、意図的に「相手の言葉」を使って話すのがコミュニケーションのコツです
連携を円滑にする方法⑦|相互理解とねぎらいで埋める


対立の根底にあるのは、お互いの業務への理解不足です。
年に一度でも良いので、
- 経理が営業の現場に同行する機会を設ける
- 営業が経理の月次決算業務を少しだけ体験する
など、お互いの仕事を「見て」「体験する」機会を作ってみましょう。
お互いの大変さ、苦労を肌で感じることで、相手への理解が深まり、
いつもありがとうございます
今月も、お疲れ様でした
といったねぎらいの言葉が自然と出てくるようになります。
日頃のちょっとした感謝の言葉が、チームワークを格段に向上させます。



自分にできない仕事をしている相手に対して、リスペクトの気持ちを忘れないようにしたいですね
連携を円滑にする方法⑧|日常的な「接点づくり」が効く


業務上のやり取りだけでなく、日常的なカジュアルな接点を増やすことも非常に効果的です。
例えば…
- 部署をまたいだランチ会を企画する
- 社内イベントで交流する
- 休憩時間に雑談する
などです。
業務外の場で個人的な関係性を築くことで、
あの経理の人、話しやすいな
あの営業さん、意外と面白いな
といった良い印象が生まれ、業務での連携もスムーズになります。



人は知っている相手には親しみを感じ、協力しようとするものです
経理と営業の摩擦を減らす!IT活用のすすめ
現代のビジネスにおいて、経理と営業の連携を強化する上で、ITツールの活用はもはや必須と言っても過言ではありません。
経理と営業のすれ違いは、人の努力や根気だけでは限界があります。
仕組みで解決することで、感情的な対立を防ぎ、ルールも守りやすくなります。
ここでは、実際に経理と営業の連携をスムーズにするために役立つツールや機能を5つご紹介します。
経理と営業の摩擦を減らすITツール5つ
- 経費精算ツール
- ワークフロー
- 請求書発行クラウド
- コミュニケーションツール
- 入金確認ツール・ダッシュボード
摩擦を減らすIT活用①|経費精算ツール
営業が日々発生させる交通費や交際費などの経費精算は、経理との摩擦の大きな原因の一つです。
領収書の提出遅れ、入力ミス、承認フローの停滞など、お互いにストレスを感じやすい部分です。
経費精算ツールを導入すれば、スマホで領収書を撮影してアップロードするだけで申請が完了したり、交通費を自動計算したりと、営業の負担を大幅に軽減できます。
経理側も、データ連携で自動仕訳が可能になったり、監査が容易になったりと、処理効率が格段に向上します。
これにより、経費精算を巡るいざこざは激減するでしょう。
摩擦を減らすIT活用②|ワークフロー管理ツール
稟議書の申請や承認、各種届出など、社内の様々な承認フローを紙やメールで行っていると、どこで止まっているのか分からなくなったり、承認者が長期不在で滞ったりと、業務が滞りがちです。
ワークフロー管理ツールを導入すれば、申請から承認までの一連の流れをシステム上で管理でき、誰が今、どの段階の承認を行っているのかが一目で分かります。
催促もしやすくなり、業務の停滞を防ぎ、スムーズな情報連携を促します。
摩擦を減らすIT活用③|請求書発行クラウド
請求書の発行業務は、営業と経理の連携が特に重要な部分です。
営業が提供する情報に基づいて経理が請求書を作成し、郵送する…というアナログな運用では、タイムラグやミスが発生しやすくなります。
請求書発行クラウドサービスを利用すれば、営業が顧客情報や案件情報を入力するだけで、経理が確認・承認後に自動で請求書が発行され、郵送やメール送信まで行えます。
過去の請求書データも一元管理でき、請求漏れや二重請求のリスクも軽減。営業の負担を減らし、経理の業務効率も向上させます。
摩擦を減らすIT活用④|コミュニケーションツール
部署間の情報共有やちょっとした確認をスムーズにするためには、ビジネスチャットツールなどのコミュニケーションツールが有効です。
メールのように堅苦しくなく、電話のように相手の時間を奪うこともないため、気軽に質問や相談ができます。
経理からのリマインドもチャットで行ったり、営業が抱えているお客様の状況をリアルタイムで共有したりと、部門間の情報格差を埋めるのに役立ちます。
絵文字やスタンプなども活用して、心理的な距離を縮める効果も期待できます。
摩擦を減らすIT活用⑤|入金確認ツール・ダッシュボード
入金管理は経理の重要な業務ですが、営業にとっても「自分の立てた売上が確実に入金されたか」は気になるところです。
入金確認ツールやBIツール(ビジネスインテリジェンスツール)のダッシュボードを活用すれば、銀行口座の入金情報を自動で取り込み、どの案件の入金なのかを自動で紐付けることができます。
そして、そのデータを営業もアクセスできる形で「入金済みリスト」や「未入金一覧」として可視化することで、営業もリアルタイムで自分の担当案件の入金状況を確認できるようになります。
これにより、経理から営業への確認の手間が減り、営業も入金に対する意識が高まります。
経理と営業は対立しながらも補完し合う関係(まとめ)


経理と営業は、時に意見がぶつかり合うこともありますが、それは決して「仲が悪い」わけではありません。
それぞれの部署が会社にとって不可欠な役割を担っており、目指すベクトルが違うからこそ、健全な摩擦が生まれることもあるのです。
このバランスが取れてこそ、会社は成長できます。
大切なのは、お互いの役割と立場を理解し、「会社をより良くする」という共通の目標に向かって協力し合うことです。
日々のちょっとしたコミュニケーションを大切にしたり、便利なITツールを導入したりすることで、これまで感じていた摩擦が大きく軽減され、部署間の連携が驚くほどスムーズになるはずです。
もし、今あなたが経理と営業の板挟みになっていたり、どちらかの部署に不満を感じていたりするなら、この記事で紹介した対処法をぜひ試してみてください。
あなたの行動が、会社の雰囲気を変え、ひいては会社全体の業績アップにも繋がるかもしれません。



大切なのは、うまく連携できる仕組みと関係性をつくることです